2019年10月11日共同通信社 聞こえない弁護士として活動を始めた松田崚さん 「時の人」  「耳が聞こえないからこそ今日の自分がある」。今夏から東京で弁護士として本格始動。 旧優生保護法下での障害者への強制不妊手術を巡る裁判の弁護団にも加わった。 「障害の有無にかかわらず、人権や生活が平等に守られる社会を目指したい」柔らかな笑 顔の奥に心(しん)の強さをのぞかせた。  山形県出身。ろう学校で学んだ後、高校は県内トップの進学校へ。 両親は「健聴者の中で切磋琢磨(せっさたくま)できれば、きっと将来を切り開ける」と 願いを込め、普通校を強く勧めたという。授業や話の内容がつかめず苦労したが、先生や 友人が連絡事項を紙にまとめるなどして支えてくれた。「乗り越えられたのは周囲のおかげ」 と感謝を忘れない。  弁護士を志したのは、筑波大在学中に同じ障害がある田門浩(たもん・ひろし)弁護士 と出会ったのがきっかけ。「聞こえなくても弱い立場の人に寄り添い、共に闘える」とそ の活躍に感動し、猛勉強して難関を突破した。同弁護士によると、聴覚障害がある弁護士 は12人目という。  仕事ではメールや筆談、FAX、手話通訳をフル活用。 スマートフォンに入れた音声認識アプリも使う。聴覚障害者から「手話が使えてほっとし た」と言われるのも励みで、依頼に応えられた時には「このために弁護士になったんだ」 と実感した。「目の前の困っている人を助けられるよう、幅広く経験して実力を付けたい」 と意気込む。  多忙な仕事の息抜きは読書で、本の世界に没頭する。休日は友人らと離島でバーベキュ ーや釣りも楽しむ28歳。